さよなら  さよなら
私は何べんもふりかへつた
焼ヶ岳は晴れた空に
      一筋の噴煙をまつすぐたててゐた
郭公がしきりにないた
      虎杖(いたどり)の花がさいてゐた
渓(たに)の一ところが翳(かげ)つた
うすい白い雲が通つてゐるのだ
しなのしろてふがとんで来た
光線がつよいので
      それは白とも橙黄色ともみえた
麦稈(むぎわら)帽子をとつて涼を入れると
      頭髪に温泉の香りが未だのこつてゐた
ああ あの温泉からは乗鞍の雪田が仰がれた
気温のひどく降下する夜
      宿りの人のすさびにともした青い走馬灯に 
                     山気は寥々と迫った―
さよなら  さよなら
私はもう一度呼んだ
焼ヶ岳の中腹にはいつのまにか
      淡い白い雲の一流れが浮んでゐた


山麓にて      田中冬二

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しなのしろてふ      田中冬二

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7月16日

シモツケ

山は雨であったのに里へ下りると雨気などもなく
桑のほぐれかけた芽に夕映えが美しかった

私達は粗末な鉱泉宿で夕食の膳に
わずかばかりの酒を酌んだ
山葵(わさび)の葉の茹でたのを肴に
皆疲労していたが それは心身を鍛錬したあとの快い疲労であった
いや それよりもおそらく誰も気がつかなかったであろう
皆の日に灼けた額のあたり 眉宇(びう)のあたりに
何かただならぬミスチックなものの宿っていたのを
それは正(まさ)しく山の霊気であった

麓の里の夜は蛙がないていた

バラ科シモツケ属(1mくらいの低木)
原産地 日本、朝鮮半島、中国
花期 平地5〜6月 高山7〜8月
別名 繍線菊(しもつけ)
花の色は赤みがかたピンク、白
夏の高山に登れば、お花畑の周辺で赤い目を引くシモツケの花に出逢えます。良く似た花に、鮮やかな濃いピンクの花のキョウガノコがありますが、これは宿根草の「シモツケソウ属」なので別種です。また遠目にはアスチルベとも間違え易いですね。

キョウカノコ(京鹿子)

六甲高山植物園にて

人間とてお金と同じで
    さびしがりやですから
        集まるところに集まる

                石田比呂志

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― 檜峠 ―



バラ科シモツケ属 多年草  原産地 北半球に10種うち日本に2種

半日陰のところにあり、花は5月下旬から6月に咲きます。葉はカエデを大きくしたような
形です。